2014年9月25日木曜日

軍事を知らずして国家を語ることなかれ-『田母神戦争大学』



田母神俊雄氏は本日、衆議院議員の西村眞吾氏とともに太陽の党の再発足を宣言しました。田母神氏は、今年2月に行われた東京都知事選では、組織票がない中、ネットを中心の保守層の支持を集め、61万票を獲得したことは記憶に新しいところですが、いよいよ国政進出に向けて、具体的な一歩を踏み出しました。

さらに本日、田母神氏の50冊目の著書となる本書の出版記念パーティーが開催されました。出版記念パーティーという名目ですが、先行して太陽の党再発足の記者会見を終えていたこともあり、パーティーはさながら太陽の党の決起集会の様相でした。同じく本格的な保守政党である次世代の党とは緊密に連携を取りつつも、独自の活動をしていくということで、今後の活躍が期待されます。

本書は、田母神氏とかつての部下であり、現在も秘書官として田母神氏を支えてきた元空将補の石井義哲氏との共著で、防衛問題を中心に、両者の対談形式でわかりやすく、時には軍事に関する専門知識を織り交ぜながら解説されています。耳学問だけの専門家ではなく、航空自衛隊の要職にあった両者の対談ということで、大変説得力があります。田母神氏を批判する人々はあたかも田母神氏が好戦的であるかのように言っていますが、田母神氏の主張は、軍備を整えることで戦争を抑止できるという、国際社会の現実を前提としたきわめて真っ当なものだと思います。

防衛問題に関する誤った議論やその根底にある誤った歴史認識、そして安倍政権が目指そうとしているものについて理解する上で、本書はとても有益だと思います。


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2014年9月23日火曜日

アベノミクスを斬る-『期待バブルの崩壊 かりそめの経済効果が剥落するとき』



アベノミクスをどう評価するかは意見が分かれるところです。異次元の金融緩和で円安・株高となり、さらに金融緩和の影響は不動産価格にも影響が出ています。その結果、資産家にとってはこれまでのところ非常に良い結果をもたらしています。一方、今年4月からの消費税増税の結果、消費が大きく落ち込み、現在回復の途上にあるか否かについては専門家の見方も分かれています。消費税増税に加えて、円安による輸入物価の上昇が消費に対してマイナスの影響を与えているとも考えられます。

かつて日本は輸出大国であり、円安になれば貿易収支、経常収支の黒字が拡大し、GDP成長率を押し上げることになりましたが、現在は慢性的な貿易赤字であり、円安になれば貿易赤字の拡大し、GDP成長率にはマイナスに働きます。

さらに雇用への影響についても、かつては円安になれば国内生産が増え、それが雇用の増加、賃金の上昇に繋がっていましたが、多くの企業は拠点を海外に移してしまい、円安になっても国内生産が増えるわけではなく、雇用の改善には繋がりません。つまり、円安で企業業績が上がったとしても、それが輸入の増加ではなく、海外での利益が円ベースで増えていることによるもので、それ自体は国内の雇用環境の改善にあまり寄与しないと考えられます。

一部の大企業でパフォーマンスのように「ベア合戦」をしていましたが、全体で見れば物価上昇に見合うだけの賃上げはできていないのではないでしょうか。人手不足による人件費の高騰も話題にはなっていますが、それは一部の技術者やこれまで3Kと言われて敬遠されていたような職種が中心であり、一般のサラリーマンの給料が大きく増えたという話はあまり聞きません。そう考えると、アベノミスクがもたらすものは、格差の拡大ではないかと思います。

本書の著者である野口悠紀雄氏は当初から一貫してアベノミクスに対して批判的な論陣を張っていました。本書はデータは概ね2013年のものでありやや古いですが、実際の経済指標に基づき、アベノミクスの下で日本経済に起こっていることを明らかにしています。グラフの解釈について、持論をサポートするためにやや強引に解釈していると感ずる部分もありますので批判的に読む必要はありますが、統計資料が豊富に掲載されていますので自分で検証することもできるでしょう。アベノミクスの負の側面を考える上で、多くのヒントを与えてくれる本だと思います。


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GHQによる占領政策の裏側を知る-『GHQ知られざる諜報戦-新版 ウィロビー回顧録』



GHQによる日本の占領政策はアメリカによる数ある占領政策の中で、最も(あるいは唯一)成功した事例ではないかと思います。本書は、そのGHQの中枢にいたG2のC.A.ウィロビーによる回顧録である。ウィロビーの立場上、マッカーサーに対して好意的な評価をしている点はやむをえないと思いますが、GHQ内部から見た日本の占領政策や、GHQ内部で起こっていた権力闘争の様子がわかる点では、とても参考になると思います。

特に興味深かった点は、GHQ内部でG2による思想調査が行われていたことです。もともとGHQの初期の対日占領政策は民主化の名の下に、日本を軍事的のみならず精神的にも経済的にも解体するもので、GHQ内部でも批判がありました。その民主化を主導していたのが民生局(GS)と経済科学局(ESS)でしたが、G2の内部調査によって、それらのスタッフの中には共産主義者が数多く潜入していたことがわかっています。

また、朝鮮戦争に関しては、G2は諜報活動により危機を察知し、朝鮮戦争勃発前からワシントンに対して警告を発し続けていたにもかかわらず、ワシントンはこれらを無視したと語っている。その上で共産軍の攻撃を「不意打ち」であると主張したといいます。アメリカ内部での縄狩り争いが事態の悪化を招いたことがよくわかります。

戦後の日本を理解する上では、終戦直後の極端な民主化と逆コース、朝鮮戦争による特需と再軍備といった一連の占領期の時代背景を理解しておく必要があると思います。教育やメディアの左傾化は民主化の影響と言えますし、それでも西側陣営の中で世界第2位の経済大国となりえたのは逆コースによる政策の転換と朝鮮戦争がきっかけと言えます。さらに憲法9条と自衛隊や集団的自衛権の関係についても、アメリカの方針転換をそのまま受け入れたために矛盾だらけとなっています。現在の日本の源流は占領期にあると言えますので、あるべき国家像を論じる上で、こうした戦後史を学ぶことが大切だと思います。


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