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2014年10月21日火曜日

深い投資哲学を学ぶ-『投資で一番大切な20の教え』


投資に関する本はこれまでたくさん読んできましたが、その中でもこの本は最も感動した本のひとつです。

なぜなら、市場の効率性とその限界について、僕がこれまで漠然と感じていた疑問に対して、とても理路整然と説明してくれていたからです。

この本を読んでも、具体的なノウハウが得られるわけではありません。でも、変動する相場の中で、自分を見失いそうになったときに、冷静に対処するために必要な投資哲学を学ぶことができます。

読んですぐに新たな投資手法を確立できるわけではありませんが、じっくり読んで自分なりに考えることで、整合性のとれた投資手法を確立することができるでしょう。

以前紹介した『ピーター・リンチの株で勝つ』の方がより具体的な投資手法に触れていて、この本の方がより抽象的だと思います。


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2014年10月6日月曜日

ファンダメンタル分析の基礎を身に付ける-『株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書』



株式投資に関する本はたくさんありますが、この本は大化けする株を当てたりするようなものではなく、ファンダメンタル分析をベースとした真面目な株の本です。

著者が公認会計士であることから、財務分析に関してはとてもわかりやすく、しかも専門的になりすぎずポイントを押さえて解説しています。この本を読めば、四季報や決算短信の中の数字の意味、決算書の読み方など、ファンダメンタル分析の基礎を理解することができるでしょう。

特に、この本の特徴は、例えばPERやPBRが低い場合の理由としてそれぞれ3つ挙げ、どの理由であれば買っても良いか丁寧に解説しているように、財務指標や株価指標の意味を実践的に解説している点にあります。よくスクリーニングに株価指標を用いることがありますが、同じ値でもその理由によって全く意味が違うことに注意しなければならないことをきちんと教えてくれます。

さらに、この本ではファンダメンタル分析をベースに置きながら、テクニカルの要素を取り入れ、売買のタイミングについても解説している点が特徴的です。もちろんテクニカルといっても、複雑な指標が出てくるわけではなく、基本的には移動平均をベースとしたトレンド分析です。通常はファンダメンタル分析というとどうしても銘柄選択に偏りがちですが、この本は売買タイミングをつかむコツを教えてくれます。著者はトレンドに乗る順張りを支持していますが、僕は逆張りの方が好きなので、その点ではスタイルが異なりますが。

デイトレードをはじめテクニカル分析に依拠した短期売買には向きませんが、ファンダメンタル分析による中長期投資にはお勧めの本です。


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2014年10月2日木曜日

相場の変動に打ちのめされそうになったときに冷静さを失わないために読む本

今日は日経平均が420円を超える大幅な下げとなり、新興系はより酷い状況でした。小型成長株中心の僕のポートフォリオは午前中はなかなか健闘していたものの、午後の入って大きなダメージを受けてしまいました。こんなときは、「長期投資ではなく、短期に小まめに利益を確定していったほうが良いのでは」とか、「利益の残っている株を売って、下げのキツイ株をナンピン買いしよう」とか、これまでの投資方針から離れていろんなことを考えてしまいます。こんな心理をピーター・リンチはこう言っています。

意志の弱い投資家は、迷い 、納得、あきらめ、という三つの感情の間を行き来して気持ちが揺れている
 こうした迷いを払拭するのに、『ピーター・リンチの株で勝つ』はお勧めです。

もし、なぜこの株を買い始めたかを知っていれば、いつ手放したらよいかも自動的にわかるだろう
 きちんと調査、分析して買った株については、日々の値動きではなく、当初想定していたシナリオが狂ったか否かだけを気にすればよいといことを改めて確認した上で、冷静な頭で今の市場を分析していきたいですね。

改めてこの本を紹介します。


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2014年9月23日火曜日

アベノミクスを斬る-『期待バブルの崩壊 かりそめの経済効果が剥落するとき』



アベノミクスをどう評価するかは意見が分かれるところです。異次元の金融緩和で円安・株高となり、さらに金融緩和の影響は不動産価格にも影響が出ています。その結果、資産家にとってはこれまでのところ非常に良い結果をもたらしています。一方、今年4月からの消費税増税の結果、消費が大きく落ち込み、現在回復の途上にあるか否かについては専門家の見方も分かれています。消費税増税に加えて、円安による輸入物価の上昇が消費に対してマイナスの影響を与えているとも考えられます。

かつて日本は輸出大国であり、円安になれば貿易収支、経常収支の黒字が拡大し、GDP成長率を押し上げることになりましたが、現在は慢性的な貿易赤字であり、円安になれば貿易赤字の拡大し、GDP成長率にはマイナスに働きます。

さらに雇用への影響についても、かつては円安になれば国内生産が増え、それが雇用の増加、賃金の上昇に繋がっていましたが、多くの企業は拠点を海外に移してしまい、円安になっても国内生産が増えるわけではなく、雇用の改善には繋がりません。つまり、円安で企業業績が上がったとしても、それが輸入の増加ではなく、海外での利益が円ベースで増えていることによるもので、それ自体は国内の雇用環境の改善にあまり寄与しないと考えられます。

一部の大企業でパフォーマンスのように「ベア合戦」をしていましたが、全体で見れば物価上昇に見合うだけの賃上げはできていないのではないでしょうか。人手不足による人件費の高騰も話題にはなっていますが、それは一部の技術者やこれまで3Kと言われて敬遠されていたような職種が中心であり、一般のサラリーマンの給料が大きく増えたという話はあまり聞きません。そう考えると、アベノミスクがもたらすものは、格差の拡大ではないかと思います。

本書の著者である野口悠紀雄氏は当初から一貫してアベノミクスに対して批判的な論陣を張っていました。本書はデータは概ね2013年のものでありやや古いですが、実際の経済指標に基づき、アベノミクスの下で日本経済に起こっていることを明らかにしています。グラフの解釈について、持論をサポートするためにやや強引に解釈していると感ずる部分もありますので批判的に読む必要はありますが、統計資料が豊富に掲載されていますので自分で検証することもできるでしょう。アベノミクスの負の側面を考える上で、多くのヒントを与えてくれる本だと思います。


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2014年9月21日日曜日

資本主義社会の将来を考える-『資本主義の終焉と歴史の危機』



日本はバブル経済の崩壊後、長引くデフレ経済の下で、歴史的な低金利が続いてきました。しかし、現在は日本に限らず、アメリカでもEUでも同じく歴史的な低金利が続いています。資本主義の本質は資本を投資して利潤を得ることであると考えれば、もはや資本にとって割の合わない時代になっていると言えます。

本書によれば、かつて16世紀のヨーロッパで歴史的な低金利が続いていました。これを克服するために西欧諸国は海に出て行き、植民地というフロンティアを開拓したと言います。現在では、そのフロンティアが新興国や発展途上国ということになりますが、これらの国々の成長率は高く、いずれ先進国との格差が縮まって行くことでしょう。また、低金利時代の資本が利潤を得るためにレバレッジをかけたハイリスクの投資を行い、これがバブルの発生を崩壊を生み出していると言えます。こうしてフロンティアがなくなると資本主義は行き詰まり、終焉を迎えるというのが本書の分析です。

資本主義が終焉を迎えつつある中、本書では「脱成長」、すなわち定常化社会、ゼロ成長社会を目指して行くべきだと指摘しています。定常化社会の中では、純投資が行われず、減価償却の範囲の中でのみ設備投資が行われ、人口も9000万人程度で横ばいとなり、生産と消費が安定的に循環していくことになります。ただし、定常化社会へ移行する際のリスクとして、財政問題と資源価格が挙げられています。

デフレや低金利が一時的なものなのか、世界的なパラダイムシフトが起こっているのかは、将来振り返ってみないと判断できないことでありますが、現状認識に関しては漠然と感じていた不安を鋭く指摘されたように感じました。一方、その処方箋として「脱成長」を目指せという主張は、飛躍があり、違和感を覚えました。資本主義の本質は格差であり、その格差が利潤の源泉となります。本書が唱えるような定常化社会は、かつての社会主義のようなユートピア思想に過ぎないようにも思えます。このあたりの価値判断は分かれるところだと思いますが、本書は資本主義社会の本質を大局的に捉える上で、有益な本だと思います。


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2014年9月17日水曜日

長期投資のバイブル-『ピーター・リンチの株で勝つ』


株式投資には様々なスタイルがあります。僕はデイトレードのような超短期よりは中長期のスパンで、テクニカルよりはファンダメンタルズ重視のスタイルです。ファンダメンタルズ重視の長期投資と言えば、まず頭に浮かぶのがウォーレン・バフェットですが、バフェットの投資スタイルを解説した書籍はあまたありますが、自身による体系的な投資理論の書籍はありません。

一方、本書の著者であるピーター・リンチはマゼラン・ファンドのファンドマネージャーとして輝かしい実績をあげた伝説のファンドマネージャーです。

中長期的なスパンで投資をしていると、日々の株価を見て、ときには自分の投資判断が正しかったのか不安になることがあります。マーケットの動きを全く無視して自分の投資判断に固執するのは危険ですが、一方でマーケットの動きに振り回されて感情的になると、誤った投資判断をしてしまう危険性があります。そうしたときに冷静さを取り戻させてくれるのが本書です。

本書では繰り返し、短期的な市場の予測や経済の予測がいかに無意味であるかを強調しています。さらに、「買った株が上がったというだけで、あなたが正しいということにはならない」「買った株が下がったからというだけで、あなたが間違っていたということにもならない」とも言っています。

本書を読んで学んだことは、株式投資において、事前にしっかり調査し、理解した銘柄について、成功のストーリーを組み立て、そのストーリーがまだ生きているかどうかを定期的にチェックすることが重要であり、株が本書の提示する6つのカテゴリーのどれに属するのかを調べることがストーリーを考える上で有益であるということです。また、本書では超人気業種の超人気会社、異常に高いPERを避けるべきと言っています。したがって、短期的な利益を狙って超人気銘柄に果敢にトライするスタイルの投資家には無意味な本かもしれません。


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2013年9月21日土曜日

アベノミクスの是非を考える前にデフレの本質を知る-『デフレーション』


吉川洋教授は、ケインジアンの立場から常に統計と理論に基づき、冷静かつ実直な議論を展開されています。時流に乗った刺激的な発言とは無縁の誠実な学者タイプであるため、玄人好みの経済学者ではないかと思います。

その吉川教授による『デフレーション』ですが、アベノミクスの柱である大胆な金融政策による2%インフレターゲットの是非を考える上で、是非読んでおくべき良書だと思います。

日銀の使命の一つは通貨の安定であり、これは伝統的にはインフレ退治を意味していました。それが今では日銀が自らインフレに誘導しようとしているわけですから、時代の変化とは恐ろしいものです。しかし、20年間にわたるデフレの本質に対して誤った理解をしていると、インフレが制御できずにバブルが発生したり、インフレによって不況を招くことになりかねません。

本書は、過去のデフレを巡る論争を振り返りつつ、現在主流派となっている貨幣数量説と価格決定メカニズムについて理論的に考察しています。そして結論として、次のように主張しています(以下要約)。
デフレの中で消費者の「低価格志向」がどんどん強まっていき、加えてグローバル経済における国際競争、円高の下、日本企業は一貫して「1円でも安く」コストダウンを図るべく「プロセス・イノベーションに専心してきた。その結果、日本経済の将来にとってより大きな役割を果たす「プロダクト・イノベーション」がおろそかになってしまったのではないだろうか。
ではなぜ日本だけがデフレになったのか、という点については日本の賃金決定に生じた大きな変化を理由として挙げています。 すなわち、高度経済成長規に確立された旧来の雇用システムが崩壊し、本格的なリストラが行われる中、「雇用か、賃金か」という選択に直面した労働者は名目賃金の低下を受け入れた、というのです。

そのように考えると、いくら日銀が金融緩和を進めても、円安によるコスト上昇によるインフレや資産インフレは起っても、インフレ期待によるプラスの経済効果は期待できないという結論に達します。今は2020年の東京五輪開催決定による株高と将来の需要期待で、そうした悲観論は影を潜めてしまいましたが、何のためのインフレターゲットなのかは常に考え続けなければならないでしょう。

さらに、吉川教授は経済学のあり方について、とくに新古典派マクロ経済学を痛烈に批判しています。
ルーカス、サージェントらによる「合理的期待」モデルは、マクロ経済学に大きな影響を与えた。筆者の考えでは、それによりマクロ経済学は、現実の経済とは何のかかわりも持たない知的遊戯に変わってしまった。
僕自身も大学で経済学を学び、大学院の講義にも出たりしていましたが、当時のトレンドが最適成長論による景気変動モデルの構築で、複雑な数学を駆使しながら、パラメーターを適当に動かして何となく現実の経済を説明しているかのように思える論文をたくさん読んでいくうちに虚しさを覚えた記憶があります。


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2013年9月15日日曜日

人間の選択は意外と不合理なものです-『予想どおりに不合理』

伝統的な経済学は、合理的選択を前提に精緻な理論を構築してきました。しかし、現実社会を見てみると、あきらかに合理的選択では説明のつかない不合理な選択をしているケースを目にします。こうした伝統的な経済学の限界を補完するものとして有力なのが、心理学と経済学を融合させた行動経済学です。

この『予想どおりに不合理』は、数多くの実例や実験結果が紹介されていて、行動経済学の理論と現実社会における現象との関係がとてもわかりやすく解説されています。この本を読むと、人間の選択において、様々な要因からバイアスがかかるためにおよそ合理的とは言えない選択をしてしまい、しかもそうした選択はある程度予想可能であるということがわかります。

数式がなく、直感的に理解しやすいため、教養として行動経済学を知る上で最適な入門書だと思います。



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2013年8月23日金曜日

「競争と公平感」


この本は、日本人の資本主義及び競争と格差に対する感じ方の特徴に始まり、雇用、格差、貧困といった社会問題について、経済学的見地から分析し、問題の本質を明らかにしようとしています。

こうした社会問題に対しては、個別事例を強調した報道により、情緒的、感情的な議論が蔓延し、政治家も問題の本質に取り組まず、大衆迎合的かつ近視眼的な対応で世論の支持を集めようとしてきた。

しかし、例えば雇用問題のように、規制強化による雇用保障や最低賃金の引き上げが、かえって雇用の選別を強め、二極化を助長することになり、政策目標と逆の効果を招いてしまうということが、経済学的には明らかであるにもかかわらず、政策レベルではこうした誤ったことが実行されています。

この本を読んでいくと、社会的問題を分析し、解決策を模索していく上で、経済学がいかに有効であるかを改めて認識させられました。以下、気になった部分を引用します。

具体的には、十八歳から二十五歳の頃、つまり、高校や大学を卒業してしばらくの間に、不況を経験するかどうかが、その世代の価値観に大きな影響を与えるというのだ。この年齢層の頃に不況を経験した人は、「人生の成功は努力より運による」と思い、「政府による再分配を支持する」が、「公的な機関に対する信頼をもたない」、という傾向があるそうだ。 
非正規雇用者が増えることが、二つの問題をもたらす。第一に、「男の非正規」の増加による貧困問題である。第二に、非正規雇用者に対する訓練量が少ないことから発生する将来の日本の生産性の低下である。 
胎児の期間の栄養状態が悪いと、代謝のメカニズムがその環境に応じてプログラムされて生まれてくるというのがバーガー教授の主張だ。つまり、胎児期における栄養が少ないと、飢餓状態に耐えるために、体内に脂肪を蓄積しやすいように体質をプログラムするというのだ。ところが生まれてくると飢餓の世界ではなく、飽食の世界だ。飢餓に備えて作られた体質は、飽食の環境では、肥満に象徴されるメタボリック症候群をもたらしてしまう。 
実は、バローとマッキナリーという二人の研究者が、国際比較データを用いて、国による各宗派の比率の差や宗教的な価値観の差が経済成長に与える影響を分析している。この結果によれば、天国や地獄といった死後の世界の存在を信じる人の比率の高い国ほど経済成長率が高い一方、教会に熱心に行く人の比率の高い国ほど経済成長率が低いという。つまり、宗教的な価値観が人々の行動に影響を与え、生産性に影響している可能性があるのだ。 
所得格差の拡大の多くは、人口構成の高齢化で説明できる。しかし、生活水準の格差を示す消費の格差は五十歳以下の年齢層で拡大する傾向にある。(『日本の不平等』)。なぜ消費と所得で格差の推移に違いがでるのだろうか。消費を決定するのは現在の所得だけでなく、将来の所得と現在の資産も影響を与えるからだ。資産格差や将来の所得格差が拡大すると現在の消費の格差が拡大する。所得税の累進度の低下も可処分所得の格差を拡大させ、消費格差を拡大する要因になる。 
日本人は「選択や努力」以外の生まれつきの才能や学歴、運などの要因で所得格差が発生することを嫌うため、そのような理由で格差が発生したと感じると、実際のデータで格差が発生している以上に「格差感」を感じると考えられる。また、日本の経営者の所得がアメリカのように高額にならないのは「努力」を重視する社会きはんがあるためかもしれない。一方、学歴格差や才能による格差を容認し、機会均等を信じている人が多いアメリカでは、実際に所得格差が拡大していても「格差感」を抱かない。こうしたことが、日米における格差問題の受け止め方の違いの理由ではないだろうか。つまり、所得格差の決定要因のあるべき姿に関する価値観と実際の格差の決定要因戸に乖離が生じた時に、人々は格差感をもつのだろう。 
高齢者にとって、自分とは直接は関係ない教育費に支出されるよりも、年金や医療の充実をしてもらうほうがありがたい。教育水準の低下によって、将来の日本の生産性は大きく低下することになるが、多くの高齢者にとっては、そんな将来のことは関係ないかもしれない。しかし、それでは若者や将来世代は、たまったものではない。このような悪循環をどこかで止める必要がある。 
個別の規制強化は、より規制の弱い雇用形態への移転を生み出すだけで、絞り込まれた正社員は一向に増加しないのだ。パートへの規制が強化されれば派遣へ、派遣規制が強化されれば請負へ、請負への規制を強化すればヨーロッパで見られるような個人事業主との請負契約というかたちを模索するというように、抜け穴探しは永遠に続くことになる。機械への代替や労務コストの安い海外への移転を通じて雇用量そのものも減少していくだろう。 
最低賃金引き上げは、貧困解消手段として政治的にアピールしやすい。だがこの結果、一番被害を受けるおそれがあるのは、前述のとおりもっとも貧しい勤労者やこれから仕事に就こうとする若者・既婚女性だ。雇用者同士の賃金格差は縮小し、労働組合には、有効な格差是正策である。ただし、それは最低賃金の引き上げで職を失ったり、職を得られなかった人を排除した結果得られたものである。社会全体でみれば、最低賃金引き上げで職を失った人まで考えれば、格差はむしろ拡大することになる。


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2013年8月7日水曜日

外資系金融機関の裏側がリアルにわかる本

著者は冒頭で、外資系金融機関の本質を次のように簡潔に言い表しています。
うまくいったときは自分のポケットに多額のボーナスを入れ、失敗したときは政府に救済される、というこの金融機関のビジネスモデルは、リスクとリターンが参加者の自由な競争のなかでバランスしていく市場原理とは似ても似つかないものだ。とんでもないモラルハザード(損失のリスクをどこかに押し付けることにより、自らはリスクを取れば取るほど儲かるようになることを表す金融用語)なのである。
外資系金融機関のトレーダーは、人の金で過大なリスクを取り、うまくいったときは多額のボーナスを貰う一方で、失敗して損失を出しても辞めれば済むわけで、一方で政府は経済の混乱を避けるため、巨大金融機関ほど、税金を投入して救おうとしてきました。

リーマンショックの中で比較的傷の浅かった日本の金融機関は、海外事業拡大のために欧米の金融機関に出資をしました。その中でも野村證券によるリーマンブラザーズの買取にあたって、致命的な失敗をしてしまったことが指摘されています。
こうして儲けたのにボーナスがもらえず悲しみの荒野に放り出されたとレーダーたちを嘲り笑うように、金融危機のまっただ中に異常にホクホクしている連中がいた。つぶれたリーマンの社員たちだ。何が起ったのか?それは日本の野村證券がつぶれたリーマンを買い取り(ここまでは良かったのだが)、何を血迷ったかとレーダーやセールスなど、フロントオフィスの社員の給料を2007年度と少なくとも同額を2年間保証すると宣言したのだ。
また、著者は、理数系の博士号取得者達が金融機関に就職し、複雑な金融工学を駆使して金融商品を生み出し、あるいはリスク管理システムの構築してきたことに対して、「頭脳の浪費」と斬り捨てています。
そして、この金融工学の分野が、世界の理数系の頭脳を浪費し続けてきた。サイエンスの分野で才能あふれる若者たちが、高い報酬に目が眩んで、外資系金融機関に殺到した。そこでは彼らがコンピュータの前に座り、朝から晩まで、何の価値も生み出さないデリバティブをこね繰り回し、リスクを切ったりくっつけたりしながら、高いマージンを隠して、馬鹿なクライアントにはめこむことばかり考えていたのだ。
リーマンショック後の混乱は収まり、ヨーロッパではギリシャなどの財政危機問題が燻っているものの、世界的な金融緩和の中で、先進国の株価は概ね高い水準で推移しています。いずれ極端な金融緩和による過剰流動性がバブルを生み出し、崩壊することになるでしょう。それがいつどこで起こるかはわかりませんが、ITバブルやファンドバブルなど、テーマは違っても世界中で同じようなことを繰り返してきました。

この本は、外資系金融機関の裏側がリアルに描かれていてとても面白く読めます。ところどころ傲慢で差別的な表現もありましたが、本音がストレートに伝わってきて、僕は嫌な気持ちにはなりませんでした。



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2013年8月6日火曜日

金融マーケットの裏側に迫る本『闇株新聞 the book』

金融系の有名ブログ「闇株新聞」が本になったものです。

実はぼくはブログを知る前に本屋でこの本を手にして買ってみました。立ち読みしながらページをめくっていくうちに、「こ、これはすごい」と思い、迷わず買ってしまいました。

ブログが本になったとはいえ、前半の為替に関する章ではかなりオリジナルの文章も掲載されています。米ドル、ユーロ、人民元、円のそれぞれについて、歴史的背景から現在の状況、これから想定されるシナリオについて、かなり論理的に書かれています。また、株式に関する章は、基本的にはブログの内容を転載されていますが、日経新聞だけではわからない経済事件の背景が解説されていて、とても面白いです。

この本をきっかけに、ブログも見るようになりましたが、著者の金融に対する造詣の深さには関心します。また、金融だけではなく、ときどき歴史問題にも触れられていて、思想的に親近感が持てました。

これからの国際金融の動向を考える上でも、この本はとても役に立つと思います。


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2013年8月3日土曜日

日本経済にまつわる「定説」を打ち破る本

この本を読むと、新聞やテレビでの報道ではわからない日本経済の本質よくわかります。「なぜ円高が悪いのか?」「日本の財政が破綻すると言われているのに、なぜ金利が低いのか?」などなど、一見当たり前のように言われている「定説」に対して素朴な疑問をぶつけながら、実は論理的に破綻していることを、やさしい言葉でわかりやすく説明しています。読んでいて、「この人、頭がいいんだな」と感じました。

この本でさらに大切なことは、日本経済が日本人が思っている以上に世界の中で重要な位置にあり、日本の産業はとてもすばらしいということが様々な例を挙げながら示しているところです。日本人や日本のメディアはどうしても自虐的になりやすく、家電製品では日本のメーカーがサムスンやLGなどの韓国メーカーに追い越されているのを見て、日本の製造業はもうだめだと思っている人もいるかもしれません。でも実際には、アジアの製造業を支えているのが日本メーカーが製造する高品質な部品や工作機械なのです。

これ以上のことは、是非この本を読んでみてください。



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