2014年10月1日水曜日

超多忙な人の読書術を盗む-『大人のための読書の全技術』


齋藤孝さんと言えば、続々と本を出版しながら、テレビに出演し、講演をこなしと、最も多忙な人の一人ではないかと思います。これまで齋藤孝さんの本はほとんど読んだことはありませんでしたが、そんな超多忙な人がどのような工夫をしながら読書をしているのか興味を持ち、書店で目に付いたこの本を手に取りました。

読書には大きく分けて速読と精読があります。速読ではいかに短い時間でその本のエッセンスを理解し、あるいは必要な情報をインプットするかが重要になります。この本では、読書の目的と締め切りを設定することがいかに読書を効果的なものにするかを強調しています。速読を効果的に行うためには集中力が必要となりますので、このことはよくわかります。

一方精読については、音読することと書くことの効果を強調しています。目だけではなく耳や手を使えば、本の内容が身につきやすくなるというのは感覚的に理解できます。ずいぶん昔の話ですが、試験勉強などでは覚える内容をつぶやいたり手を動かして書きなぐることで暗記するという方法が効果的でした。もちろん、三色ボールペン方式も登場します。

そして、読書の最終的な目的はアウトプットすることです。読書によってインプットしたものを自分なりに消化してアウトプットできれば、それは自分のものにできたと言えるでしょう。

僕は読書が好きな方だとは思いますが、いくら本を読んでも頭に残らず、ましてやアウトプットができないというのが悩みの種でした。この本は、重要なポイントが太字になっているので、この太字を読むだけでも十分内容を理解できます。その点では速読の練習に丁度良いと言えるでしょう。

読書の達人の体系化された読書法を学ぶことは、これからの読書生活をより充実したもの上で、大いに役立つでしょう。過去に記事にした佐藤優さんの『読書の技法』をあわせて読むと、さらに面白いと思います。


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2014年9月30日火曜日

故郷の優しい景色を思い出す-『眉山』


年を重ねるについて、故郷の良さを感じるようになってきました。若いころは帰省してもすることがないため居心地が悪く、東京に戻り、高層ビル群を見て、落ち着きを感じていたものでした。それがいつからか、故郷の風景が疲れた心を癒してくれるようになりました。

この本で描かれているのは徳島で、その田舎の景色と人間模様がとても優しく描かれています。

主人公の咲子は父を知らず、咲子の母”神田のお瀧”は、家庭のある男性を愛し、その子を女手一つで育て、最後まで毅然と生きてきました。ガンを患いながらも、その痛みを見せず気丈に振舞う姿は、3年前に他界した母のことを思い出させてくれました。咲子は母が献体を申し込んでいたことにショックを受けながらも、母の人生を知り、自分の父親の存在を知る過程で、母の想いを理解していきます。

この本を読みながら、母のことを思い出し、母がこの世を去る前に、十分に親孝行ができなかったことを今更ながら悔やみました。人はそれぞれいろんなものを抱えながら生きているのであり、それでも毅然として生きていくことが大切だと感じさせてくれる話でした。


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2014年9月29日月曜日

大衆化社会に警鐘を鳴らす-『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』


小泉総理による郵政選挙や民主党による事業仕分けなどは劇場型政治の典型的な例ですが、今振り返るとあの熱狂は何だったのだろうと思います。郵政民営化ってそこまでやるほど重要なことなのか、民主党のマニュフェストには財源の裏付けのないじゃないか、そんなことを言ってみても、連日のマスコミの報道とそれに煽動された国民の声の大きさの前では無力でした。この国がどんどんおかしくなっていくことに危機感を覚えながらも、逆にとことん悪くなればさすがにどこかでおかしさに気付くだろうと一縷の望みを持っていたところ、安倍政権が誕生してくれたことに安堵しました。

今の選挙は小選挙区制の下、いわゆるB層に対して以下に働きかけるかというある種のマーケティング戦略が重視されています。とにかく一番にならないと選挙に当選しないわけですから、難しい問題をまじめに議論するよりも、問題を単純化し、有権者の感情に訴えかけることがより重要となりますし、さらに言えば、主張している内容より、誰が言っているかの方が重要だったりします。本書ではB層とはマスコミの報道に流されやすい「比較的IQの低い人たち」とされていますが、このB層の拡大によって政治はもとより、芸術や料理などの分野でも「本物」が駆逐され、大衆化が進んでいることに警鐘を鳴らしています。

テレビではコメンテーターと称してその道のプロではなく芸能人がもっともらしくコメントしたり、内容に関係なくテレビや雑誌で取り上げられた店が名店になったり、書店には時流に乗ったテーマの本が氾濫していたりと、プロの価値が低下し、本物のわかる人が減っています。そうなると本物が育たない社会になってしまいます。

現在は民主主義が最良の政治形態だとされていますが、チャーチルの皮肉を引用するまでもなく、B層が支配する大衆社会が最良とは言えないでしょう。選挙の度にブームが起きるようでは、長期的な国家ビジョンを持つことができず、大衆迎合的な政策を乱発することになりかねません。民意が常に正しいとは限りません。しかし民主主義は民意が正しいという擬制の上に成り立っています。最も民主的な政治体制だったと言われるワイマール体制の下で、ナチスが政権の座に就いた訳ですから、ひとたび熱狂が生まれれば、民意が暴走することだってあるわけです。そう考えると健全なエリートの養成についてもっと考えるべきではないかと思います。例えば政治家は官僚を叩き、疎外することで政治主導のパフォーマンスをするのではなく、官僚に国家のエリートとしていかに国のために働いてもらうかという視点で考えていくべきではないでしょうか。

この本を読みながら、偉そうなことを言ってみても自分自身がだんだんB層になっているのではないかという危機感を持ちました。楽な方に流されず、古典を読み、自分の頭で考える習慣を改めて身に付けていきたいですね。


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