2013年8月31日土曜日

1970年代から現代の日本に警鐘を鳴らした本です


この「日本の自殺」という本は、1975年に『文芸春秋』に収められた論文に解説を付けたものです。当時の日本はまだ高度成長による繁栄に沸き立っていた時期だと思いますが、この本は古代ローマの没落の原因から、当時の日本社会が内部的な要因によって自壊しつつあると警鐘を鳴らしています。そこで指摘されている問題点は、今読んでみても新鮮であり、本質的な解決がなされないまま、事態が悪化しつつあることがわかります。正直、はじめて読んだときはあまりにも現在の日本の状況を的確に予測したものであり、衝撃を受けました。もともとは1980年代の日本を念頭に置いて書かれたものだと思われますが、現在の日本が抱える問題の本質を理解する上ではとても参考になります。

まず、ここで分析のフレームワークとして援用されているのがトインビーの文明論ですが、本書の冒頭は、このような言葉で始まっています。
諸文明の没落の原因を探り求めて、われわれの到達した結論は、あらゆる文明が外からの攻撃によってではなく、内部からの社会的崩壊によって破滅するという基本的命題であった。
次に、本書で指摘されている古代ローマの没落の原因を要約してみると次のようになります。
①ローマ市民は、次第に欲望を肥大化させ、労働を忘れて消費と娯楽レジャーに明け暮れるようになり、節度を失って放縦と堕落への道を歩みはじめた。 
②人口の膨張により市民団のコミュニティを崩壊し、一種の「大衆社会化状況」が古代都市ローマの内部に発生し、急速に拡大していった。 
③経済的の没落したローマ市民が「パンとサーカス」を要求するようになった。さらに、無償で「パンとサーカス」の供給を受け、権利を主張するが責任や義務を負うことを忘れたことで、恐るべき精神的、道徳的退廃と衰弱を開始した。 
④市民大衆が際限なく無償の「パンとサーカス」を要求し続けることで、経済はインフレーションからスダグフレーションへ進んでいった。 
⑤エゴの氾濫と悪平等主義の流行によって、衆愚政治に陥っていった。
今の日本を見ると、約20年間にわたるデフレに苦しんできたので、インフレの心配はあまりないようにも思えますが、財政政策による景気対策を重ねる中で日本の財政状況は急速に悪化し、社会保障制度は破綻しつつあります。そうした意味では、「パンとサーカス」という福祉政策によって、日本が経済的に自壊しつつあるという危機感は古代ローマと共通しているとも言えます。

しかし、経済的な問題以上に問題なのは、精神的退廃ではないでしょうか。本書の中で次のように指摘しています。
こうして、自制心、克己心、忍耐力、持続力のない青少年が大量生産され、さらには、強靭なる意志力、論理的思考能力、創造性、豊かな感受性、責任感などを欠いた過保護に甘えた欠陥青少年が大量に発生することとなった。
このように、戦後日本の繁栄は、他方でひとびとの欲求不満とストレスを増大させ、日本人の精神状態を非常に不安定で無気力、無感動、無責任なものに変質させてしまった。それはまた伝統文化を破壊することを通じて日本人のコア・パーソナリティを崩壊させ、倫理観を麻痺させ、日本人の精神生活を破壊してしまった。この生活様式の崩壊と日本人の内的世界の荒廃は、日本社会の自壊作用のメカニズムの基礎をなしていったといわねばならない。 
現代人にみられるこの思考力、判断力の全般的衰弱と幼稚化傾向は、一体なにによってもたらされたのであろうか。実に憂慮すべきことに、驚くべき技術の発達、物質的豊かさの増大、都市化、情報化の進展と教育の普及など高度現代文明がもたらした恩恵それ自体が、このような精神状態を副作用として引き起こしていたのである。
 さらに、本書で指摘している情報化社会における情報汚染の拡大や教育におけるエリートの否定と悪平等主義といった問題も、十分今でも通用する内容であり、多くの示唆を与えてくれます。

社会の幼児化というテーマでは榊原英資氏の「幼児化する日本社会」も参考になりますので、本書とあわせて読まれることをおすすめします。



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2013年8月29日木曜日

国連事務総長の発言を簡単に許すべきではないでしょう

国連の潘基文事務総長が26日のソウルでの会見で安倍政権の歴史認識を批判したことが問題となっています。潘事務総長がすぐに釈明し、菅官房長官はこれを受け入れる旨を表明したことで、事態は収拾しましたが、このことで大きな問題が明らかになりました。

韓国は竹島を実効支配し、従軍慰安婦の強制連行を捏造して慰安婦の像を広めようとし、日本海を東海と表記させようと世界中でロビー活動を行っています。そのような国から国連事務総長が選ばれ、当人が中立性の自覚が希薄で、自国の国益に沿った偏った発言を平気でしてしまうとなると、国際社会における日本の立場が非常に危うくなり、日本の国益が韓国によってどんどん損なわれていくことになります。

「国連の中立性」とは言っても、虚構に過ぎない面はありますが、それでも一定の節度は求められてしかるべきです。菅官房長官は今回の件では大人の対応をしましたが、このような偏向した国連事務総長をもっと徹底して非難すべきだったのではないかと感じます。さらに言えば、日本ではいまだに世界で第2位の国連分担金を拠出しています。それだけの負担をしていながら、国連が日本の国益を損なうような機関であれば、分担金の額を削減すると主張するべきでしょう。

韓国は日本の隣国ではあっても友好国ではありません。そんな国が国際機関の重要なポストを確保することが日本の国益にとってどれだけマイナスか、改めて認識する必要があります。




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2013年8月24日土曜日

いつも見出しだけが踊る優遇税制の議論-投資減税について

政府が今秋の成長戦略第2弾の投資減税の目玉の一つとして、企業の設備投資の一定額を法人税から差し引く「税額控除」の導入が検討されているようです。税額控除の期間は5年、控除できる税額は設備投資額の3%となる見通しだそうです。

これを見て、「今秋の成長戦略第2弾の投資減税の目玉」としてはあまりに小粒じゃないかと感じたのは僕だけでしょうか?

確かに、もともと設備投資を考えていた企業からすればメリットがあると思いますが、設備投資の意思決定においてどれだけの影響があるかは疑問です。つまり、投資を誘発する効果としては極めて薄いとしか考えられません。そもそも財政再建のためにいろいろ問題点を指摘されていながら消費税を増税しようとしているのですから、財務省が大盤振る舞いをするわけはありません。結局「見出し」だけが踊ることになるのは確実でしょう。

企業が設備投資をする上でまず考えることはそこから生まれる収益であり、投資にかかるコストです。税金が減るからまず設備投資をしようと考える人はいないでしょう。設備投資を増やしたければ、国としてできることはまず規制緩和で新しい市場が生まれるのを後押しすることでないでしょうか?小手先の税制改正だけでできることは限られています。

つい先日には、旅館、ホテルで固定資産税を減税する話が出ていました。内容は建物の経過年数を50年から40年にしようというような話でしたが、これもせこい話だと思います。地方で経営の苦しい旅館などは、バブル期の過大投資のせいで固定資産税評価額40億円のものが売買では数億円程度の評価となるケースもあります。こうした売買で問題となるのが固定資産税負担の重さに加え、登録免許税や不動産取得税といった売買にかかってくる税金です。これらの税金もすべて固定資産税評価額に連動していますので、どうせやるならこの固定資産税評価額を収益還元法に基づく時価に評価替えをするくらいのことがなければインパクトはありません。地方の旅館、ホテルの再生のためならこれくらい思い切ったことをすれば、赤字が黒字になって追加投資ができるようになったり、より資金力のある会社が買って大々的にリニューアル投資をすることも期待できます。

優遇税制は小さなところで帳尻を合わせようとして、本来の目的に対してあまり意味のないものになりがちですので、安倍首相にはもっと思い切った成長戦略と連動する投資減税を期待したいと思います。

投資減税 3%の税額控除を検討 政府、現在より条件緩和



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