2014年9月21日日曜日

資本主義社会の将来を考える-『資本主義の終焉と歴史の危機』



日本はバブル経済の崩壊後、長引くデフレ経済の下で、歴史的な低金利が続いてきました。しかし、現在は日本に限らず、アメリカでもEUでも同じく歴史的な低金利が続いています。資本主義の本質は資本を投資して利潤を得ることであると考えれば、もはや資本にとって割の合わない時代になっていると言えます。

本書によれば、かつて16世紀のヨーロッパで歴史的な低金利が続いていました。これを克服するために西欧諸国は海に出て行き、植民地というフロンティアを開拓したと言います。現在では、そのフロンティアが新興国や発展途上国ということになりますが、これらの国々の成長率は高く、いずれ先進国との格差が縮まって行くことでしょう。また、低金利時代の資本が利潤を得るためにレバレッジをかけたハイリスクの投資を行い、これがバブルの発生を崩壊を生み出していると言えます。こうしてフロンティアがなくなると資本主義は行き詰まり、終焉を迎えるというのが本書の分析です。

資本主義が終焉を迎えつつある中、本書では「脱成長」、すなわち定常化社会、ゼロ成長社会を目指して行くべきだと指摘しています。定常化社会の中では、純投資が行われず、減価償却の範囲の中でのみ設備投資が行われ、人口も9000万人程度で横ばいとなり、生産と消費が安定的に循環していくことになります。ただし、定常化社会へ移行する際のリスクとして、財政問題と資源価格が挙げられています。

デフレや低金利が一時的なものなのか、世界的なパラダイムシフトが起こっているのかは、将来振り返ってみないと判断できないことでありますが、現状認識に関しては漠然と感じていた不安を鋭く指摘されたように感じました。一方、その処方箋として「脱成長」を目指せという主張は、飛躍があり、違和感を覚えました。資本主義の本質は格差であり、その格差が利潤の源泉となります。本書が唱えるような定常化社会は、かつての社会主義のようなユートピア思想に過ぎないようにも思えます。このあたりの価値判断は分かれるところだと思いますが、本書は資本主義社会の本質を大局的に捉える上で、有益な本だと思います。


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