2014年9月23日火曜日

GHQによる占領政策の裏側を知る-『GHQ知られざる諜報戦-新版 ウィロビー回顧録』



GHQによる日本の占領政策はアメリカによる数ある占領政策の中で、最も(あるいは唯一)成功した事例ではないかと思います。本書は、そのGHQの中枢にいたG2のC.A.ウィロビーによる回顧録である。ウィロビーの立場上、マッカーサーに対して好意的な評価をしている点はやむをえないと思いますが、GHQ内部から見た日本の占領政策や、GHQ内部で起こっていた権力闘争の様子がわかる点では、とても参考になると思います。

特に興味深かった点は、GHQ内部でG2による思想調査が行われていたことです。もともとGHQの初期の対日占領政策は民主化の名の下に、日本を軍事的のみならず精神的にも経済的にも解体するもので、GHQ内部でも批判がありました。その民主化を主導していたのが民生局(GS)と経済科学局(ESS)でしたが、G2の内部調査によって、それらのスタッフの中には共産主義者が数多く潜入していたことがわかっています。

また、朝鮮戦争に関しては、G2は諜報活動により危機を察知し、朝鮮戦争勃発前からワシントンに対して警告を発し続けていたにもかかわらず、ワシントンはこれらを無視したと語っている。その上で共産軍の攻撃を「不意打ち」であると主張したといいます。アメリカ内部での縄狩り争いが事態の悪化を招いたことがよくわかります。

戦後の日本を理解する上では、終戦直後の極端な民主化と逆コース、朝鮮戦争による特需と再軍備といった一連の占領期の時代背景を理解しておく必要があると思います。教育やメディアの左傾化は民主化の影響と言えますし、それでも西側陣営の中で世界第2位の経済大国となりえたのは逆コースによる政策の転換と朝鮮戦争がきっかけと言えます。さらに憲法9条と自衛隊や集団的自衛権の関係についても、アメリカの方針転換をそのまま受け入れたために矛盾だらけとなっています。現在の日本の源流は占領期にあると言えますので、あるべき国家像を論じる上で、こうした戦後史を学ぶことが大切だと思います。


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