2014年10月5日日曜日

選択肢は多い方が良いのか?-『選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義』



この本の著者であるシーナ・アイエンガーさんは盲目でありながらコロンビア大学ビジネススクールの教授だということで日本でも大変話題になった方ですが、この本は、そんな著者の特性とは関係なく面白く示唆の富んだ本だったと思います。

私達は生きている以上、日常の小さな行動から人生における大きな決断まで、様々な選択を行っている言えます。この本はその選択という行動を科学的に解明したものです。

選択肢が多ければ多いほど選択の幅が広がり良いことのように思われますし、ある行動を人から強制されるよりも自ら選んだ方が幸せと考えがちです。しかし、この本で明らかにしていることは、育った環境によっても選択に関する捉え方が異なるし、また過大な選択肢はむしろマイナスに作用するということです。

一般にアジア系民族は集団主義であり、アングロサクソン系民族は個人主義だと言われます。紹介されている実験結果でも、アジア系子供は、例えば母親が選んだものを重視し、アングロサクソン系の子供は自分が選んだものを重視するとなっています。

一方、ジャムの実験では、余りにも選択肢が多いと購買行動につながらず、選択肢を限定する方がむしろ購買行動につながりやすいという結果が出ています。また、旧東ドイツの人々は、ベルリンの壁崩壊直後は自由を歓迎していたものの、次第に資本主義社会のもとでは確かに一見選択肢が広がったように見えても、同時に格差も広がったため、昔の方が良かったと考え、しかも同種の商品の選択肢が増えることをあまり評価していないという逸話も紹介されています。

さらに、重い結果を伴う選択は、大きな代償を伴うという例も紹介されています。助かる見込みのない子供の延命治療を続けるか止めるかという選択を、親がする場合と医者に委ねられる場合とでは、その後の親の精神状態に与える影響が大きく異なり、親が延命治療を止める選択をした場合の方が長く悲しみを引きずると言います。そういう意味では、選択のための情報は必要でも、本当に重い選択は専門家などの第三者に委ねる方が良いのかもしれません。この問題は、今後高齢化社会が進む中で、安楽死の議論にもつながってくるでしょう。


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