2013年7月25日木曜日

『官僚の責任』 古賀茂明

『官僚の責任』 古賀茂明 PHP新書

この本は、官僚機構の内部にいた者の視点から、官僚の行動様式やメンタリティがわかりやすくリアルに解説されていて、官僚批判を喜ぶ人々からは受けがいいでしょう。

しかし、現行の官僚機構の弊害を取り除くための改革案として古賀氏が提示している成果主義への人事制度改革は、一昔前に民間企業でももてはやされたものの焼き直しで、運用面で課題があると言わざるを得ません。また、より根本的な原因は、政治家達が国民受けを狙って官僚をスケープゴートにしたり、都合の良いときだけ利用しようとすることではないでしょうか。

大臣が「全て自分が責任を取るから、正しいと思うこととどんどんやれ」と現場を信頼するだけでも、官僚たちがその能力を前向きに活用するようになるのではないかと思います。

そうした観点から見ると、古賀氏の官僚批判も従来からのステレオタイプの域を脱していないため、あまり建設的な提言ではないと思います。ただ、社会保障について「ちょっとかわいそうな人は救わない」という考え方は、現実を冷徹に見つめれば、正論であると評価できます。

0 件のコメント:

コメントを投稿