本書は「戦前昭和の歴史は震災復興=国家再建の歴史である。」という視点で、社会主義、議会主義、農本主義、国家社会主義の4つの国家構想がどのように展開し、戦前昭和の創ってきたかを示しています。
この時代のイデオロギーのわかりにくいところは、左翼である社会主義(共産主義)と右翼である国家社会主義とは目指す社会のあり方が同じだという点です。日中戦争が始まり、国家が非常事態へと突入していく中で、政党は力を失い、一方で台頭してきたのは軍部と官僚です。彼らが推し進めたのが経済統制であり、ソ連の計画経済を手本としたものです。
治安維持法により共産主義が弾圧され、壊滅的打撃を受けましたが、所有権概念を制限し、農民や労働者の生活を守り、経済を国家の統制下に置こうとした軍部の政策は、共産主義者達が目指したものと変わりはありません。要するに天皇制を前提とするか打倒するかの違いだけなのです。だから共産主義者の中には、「転向」して、国家社会主義運動に参画していったものも数多くいました。
この本は、こうした国家構想の展開とその社会的背景をわかりやすく解説していて、戦前昭和史を理解する上で、大変役に立ちました。
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