2013年8月7日水曜日

外資系金融機関の裏側がリアルにわかる本

著者は冒頭で、外資系金融機関の本質を次のように簡潔に言い表しています。
うまくいったときは自分のポケットに多額のボーナスを入れ、失敗したときは政府に救済される、というこの金融機関のビジネスモデルは、リスクとリターンが参加者の自由な競争のなかでバランスしていく市場原理とは似ても似つかないものだ。とんでもないモラルハザード(損失のリスクをどこかに押し付けることにより、自らはリスクを取れば取るほど儲かるようになることを表す金融用語)なのである。
外資系金融機関のトレーダーは、人の金で過大なリスクを取り、うまくいったときは多額のボーナスを貰う一方で、失敗して損失を出しても辞めれば済むわけで、一方で政府は経済の混乱を避けるため、巨大金融機関ほど、税金を投入して救おうとしてきました。

リーマンショックの中で比較的傷の浅かった日本の金融機関は、海外事業拡大のために欧米の金融機関に出資をしました。その中でも野村證券によるリーマンブラザーズの買取にあたって、致命的な失敗をしてしまったことが指摘されています。
こうして儲けたのにボーナスがもらえず悲しみの荒野に放り出されたとレーダーたちを嘲り笑うように、金融危機のまっただ中に異常にホクホクしている連中がいた。つぶれたリーマンの社員たちだ。何が起ったのか?それは日本の野村證券がつぶれたリーマンを買い取り(ここまでは良かったのだが)、何を血迷ったかとレーダーやセールスなど、フロントオフィスの社員の給料を2007年度と少なくとも同額を2年間保証すると宣言したのだ。
また、著者は、理数系の博士号取得者達が金融機関に就職し、複雑な金融工学を駆使して金融商品を生み出し、あるいはリスク管理システムの構築してきたことに対して、「頭脳の浪費」と斬り捨てています。
そして、この金融工学の分野が、世界の理数系の頭脳を浪費し続けてきた。サイエンスの分野で才能あふれる若者たちが、高い報酬に目が眩んで、外資系金融機関に殺到した。そこでは彼らがコンピュータの前に座り、朝から晩まで、何の価値も生み出さないデリバティブをこね繰り回し、リスクを切ったりくっつけたりしながら、高いマージンを隠して、馬鹿なクライアントにはめこむことばかり考えていたのだ。
リーマンショック後の混乱は収まり、ヨーロッパではギリシャなどの財政危機問題が燻っているものの、世界的な金融緩和の中で、先進国の株価は概ね高い水準で推移しています。いずれ極端な金融緩和による過剰流動性がバブルを生み出し、崩壊することになるでしょう。それがいつどこで起こるかはわかりませんが、ITバブルやファンドバブルなど、テーマは違っても世界中で同じようなことを繰り返してきました。

この本は、外資系金融機関の裏側がリアルに描かれていてとても面白く読めます。ところどころ傲慢で差別的な表現もありましたが、本音がストレートに伝わってきて、僕は嫌な気持ちにはなりませんでした。



人気ブログランキングへ

0 件のコメント:

コメントを投稿